何かを話しているときに、持っている言葉の全部がまるで馴染まない、と思ったことはありませんか？

多様性という言葉をよく目にするようになったいまでも、言葉が足りません。LGBTQIAと、ラベルだけがのびたところで、その中に自分がすっきりあてはまる日が来ることはない気がしながら、それでも、なのか、だからこそ、なのか、ラベルからずれた部分を照らしてくれる言葉や作品を見つけると、すくいあげられた、と思います。

違和感が、苦痛が、解決しなくても、それが言葉になることで、”見える”ことがわかるだけでちょっと、楽になることはあるのではないでしょうか。そういう言葉や作品がすぐに見つかる人もいれば、真っ暗な獣道を擦り傷を作りながら探さなければいけないような人たちもいます。今回の対談トークイベントは、暗い獣道を歩くような気持ちでいる人たちと、そういう人のそばにいたいと思う人たちに向けて企画しました。

登壇者は東京大学大学院人文社会系研究科博士課程に在学中で、クィア理論・フェミニスト哲学を研究されている青本柚紀さんと、犬を愛する漫画家でノンバイナリー、ジェンダーフルイドとして生きている山内尚さん。
『われらはすでに共にある:反トランス差別ブックレット』においてそれぞれ自身の違和感にあった言葉が見つかるまでの困難や、だからこそいまどのような人たちに向けて作品を作っているのかを書かれていたお二人に、その過程で何を見つけて、どんな言葉に出会ったのか、自分自身を説明することについての道程をうかがいます。

誰かに理解を求めるため、というよりは、ただ自分自身を理解するため、説明するための言葉を見つける道程が、ほんの少しでも歩きやすくなる時間になればと思います。

出演者プロフィール

青本 柚紀

1996年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程在学中。専門はクィア理論・フェミニスト哲学、とくにジュディス・バトラー。共編著に『われらはすでに共にある：反トランス差別ブックレット』（現代書館、2023年）、共著に『世界最先端の研究が教える　すごい哲学』（総合法令出版、2022年）がある。

山内 尚

犬を愛する漫画家。秋田書店から『魔女の村』『クイーン舶来雑貨店のおやつ』が電子単行本で二冊同時発売中。2024年1月にはエレガンスイブ(秋田書店)から四姉妹の物語、『よるべない花たちよ ～for four sisters～』も電子単行本で発売される。3月には今まで山内尚が着てきた服をイラストで描いた本と、山内尚とパートナーの清水えす子の暮らしを漫画と文章のかたちで綴った共著が、二冊同時に刊行予定。ノンバイナリーでありジェンダーフルイドとして生きている。